広島経済大学メディアビジネス学科3年 田中詩織
(OSC放送記者レポート)
(OSC放送記者レポート)
2011年7月9日、立町キャンパスで開催された、第3回ひろしまメディア文化研究会(M-chic)のテーマは「ポスト311の地域メディアを考える〜ラジオと共感のコミュニティ づくり〜」でした。今回は、東北大学の坂田邦子さん、RCC中国放送の金尾雅彦さん、ひろしまジン大学の平尾順平さんにご登壇いただきました。東日本大震災のときのメディアの機能について伺いながら振り返り、これからの地域メディアのあり方についての議論を行いました。
●3.11とメディアと私 − 東北大学坂田邦子さん
坂田さんには、様々なメディアと東日本大震災がどのように関わっていたのかということを話して頂きました。以下にメディアごとのポイントをまとめました。
○ラジオ
ラジオは地震発生から約10分間ストップしたそうです。そして、ラジオでは具体的な被害状況ではなく、地震の規模を表すマグニチュードや津波の高さを伝えていることが多く、"数値"だけを言われても被害状況や重大さが分かりにくかったという課題も見えました。音だけで発信するラジオでは、具体的な"状況"をより詳しく伝える必要があると改めて感じました。
○新聞
地震発生の次の日は配達されなかったそうです。そのため、避難所に掲示されている号外を読み、情報を入手したとのことでした。その次の日からは通常通り自宅に配達されたが、坂田さんの住んでいる地域は、テレビ・ラジオの復旧が早かったため、ゆっくり読む時間がなかったそうです。速報性はやはりテレビ・ラジオなどには劣ると分析できます。新聞は見出しチェック程度で把握することしかできなかったということが分かりました。
○携帯・メール
携帯・メールは1週間使えなかったそうです。その後、携帯やパソコンへ大量の安否確認の連絡が入っていたそうです。が、返信するのも大変で学生の安否確認もままならないまま、携帯・メールの理由を諦めてしまったとのことでした。
○テレビ
「希望を見出せる情報」が欲しかったとのことでした。現場のことを把握するのに時間がかかり、「今」の状況が分かりにくかったそうです。どこに行ったらいいのか、どこに何があるのか、などといった「生きるための情報」を多く流して欲しかったそうです。
○インターネット・ソーシャルメディア
ソーシャルメディアはメリットとデメリットが浮き彫りになりました。自ら情報発信ができるというメリット、反対に情報収集の際に出てくるデマなどのデメリットが問題でした。リアルタイム情報を発信できるが、その情報を人々が見るときは過去になっているという、リアルタイムやタイムラグのお話が印象的です。現代は、情報が検索されるインターネットのようなpull型メディアが多いが、垂れ流し情報のTVやラジオなどのpush型メディアの役割の大きさを実感しました。
○ご近所・友人
一番貴重で、自らの行動に結びつける信頼性の高いものでした。自分と同じ立場なため、信頼でき、身近な存在ということが大きかったです。
○地元メディア
当事者として記事が書かれていることから、きめ細かい生活情報を入手できたメディアだったとのことです。同じ目線、気持ち、つらさを共有でき、安心感と連帯感を生みだすことができたのは地元メディアの強みだと感じました。
以上のことを踏まえて、マニュアル通りではなく既存のものを変える勇気が大切だと感じました。その中でマスメディアの震災報道機能の見直しも必要だと思います。被災地に対して機能することが一番重要な課題だと思います。
●ひろしま では? −RCC中国放送金尾さん、ひろしまジン大学平尾さん
RCC中国放送で放送している「勝手にトークひろしま!」についてお話いただきました。通常のテレビやラジオとは違った、「普通の人が全力で話す場」として大きな役割を果たしています。ustreamで映像が流れ、ラジオで配信する、新たな取り組みが新たな発想として注目されています。
ひろしまジン大学は街をまるごとキャンパスに主体的に地域に関わる人をつくるという目的にもとでのお話をしていただきました。広島についてみんなで共有し、みんなが先生・生徒になって取り組んでいるそうです。世代や職業、分野など関係なく、地元のことを知って経験し共有する場としています。主体的に社会や人と関わっていくことが大切だとおっしゃっていました。
●コミュニティを繋げ、メディアの役割の見直しを
この研究会で得た大切なことは、小さなコミュニティを繋げていくことで、自分たちだけで完結するのではなくみんなで共有することだと思います。ネットワークをきちんと築き、日ごろからの人と人との繋がりを大切にしておくことが大前提になると感じました。そして、マスメディアの働きの大きさを再認識しました。ソーシャルメディアがどんどん溢れ、人々にとって身近な存在になっているのは事実です。しかし、いざという時に私たちは「マスメディア」に頼ります。ソーシャルメディアとマスメディアがうまく互いに機能することが大切だと感じました。