広島経済大学メディアビジネス学科2年 佐竹佑介
(OSC放送記者レポート)
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今回、私はもみじ饅頭で有名である、株式会社にしき堂の取材に行ってきた。今、にしき堂が売り出している生菓子のもみじ饅頭「生もみじ」が話題になっている。取材に行くことで、これまでの歴史や積み上げてきた努力、創意工夫などを知ることができた。今回、お話を伺ったのは代表取締約社長の大谷博国さんである。
●何十年もの試行錯誤
株式会社にしき堂は、昭和26年創業で、これまでにたくさんの美味しいお菓子を作ってきた。現在、にしき堂のもみじ饅頭は、こしあん、チーズクリーム、チョコレートなど、様々な味がある。それは何十年も掛けて試行錯誤しながら作られてきたものだ。創業当初は、他社と同様、炭を使って作ることから始めた。しかし、炭で焼いてもみじ饅頭を作るのは、温度調節が難しく、苦労も多かった。重労働の仕事になり、女の人が作るのは難しかった。そこで、もっと良い方法はないかと考えた時に、ガスを使った専用の機械を開発しようと思い付いた。今、にしき堂のもみじ饅頭には6種類の味があるが、それぞれの味によって異なる機械を使っている。機械は何年もかけて改良され、それぞれの味を生み出してきた。
「一つのお菓子を作るのには何年もかかります。それに新しいお菓子を作るのなら、永久に売れるお菓子にしたいのです」と、社長の大谷さんはおっしゃっていた。チーズクリームの味を作るのに7年、生もみじを作るのには10年の歳月が掛かった。どんなお菓子も簡単には作ることはできない。心に響くお話だった。
●大切なお客様の声
今、一番の売り上げは生菓子の生もみじである。その生もみじはお客様の発想で作られたそうだ。あるお客様に「なぜ、生八橋はあるのに、生もみじは無いの?」と尋ねられたのがきっかけで生もみじがつくられたのだ。しかし、その生もみじも、売り出し当初と今のものでは味は異なるという。その理由は、味に改良を重ね、生地の配合を変えているからだ。生もみじだけではなく、すべてのもみじ饅頭は、昔と今では配合は異なり、その時代に合わせた生地で作っている。
「昔と今の時代では、舌が変わってきていると思います。今の時代の人たちは、柔らかいお菓子が好きですしね。昔と同じお菓子を作っても、飽きられてしまい、売れることはないと思います」。確かに、時間が過ぎていくごとに、人々の味覚は変わっていくのだろう。今の時代の人たちに、求められているお菓子を作ることが重要なのだ。そこで、顧客の声が重要になってくる。にしき堂では、毎日、お客様の声を書いたノートを店舗ごとに、提出することを義務づけている。これを行うことにより、購買者の声を身近に感じることができ、距離を縮めることができるのだという。事実、生もみじを作る時も、何回も彼らの声を聞いて、改良してきたという。お客様の声を重視する。これが人気のお菓子を作る近道にもなるということだ。
●「百試千改」 にしき堂の思い
これまで、にしき堂はたくさんの売れるお菓子を作ってきた。今では、にしき堂のお菓子は広島の名物になっている。広島に観光に来た人たちが、にしき堂のもみじ饅頭や生もみじをお土産に買って帰ることは多いだろう。しかし、にしき堂の思いはさらに大きなところにある、と大谷社長のお話を聞いていて感じた。
「県外の方々のお土産としてだけではなく、県内の自宅でも家族のみなさんが食べたいと思うお菓子を作りたい。美味しいお菓子を食べることはみんなを幸せすると思います」。その思いがあるからこそ、何年も1つのお菓子作りに時間をかける。にしき堂のお店には「百試千改」という言葉が掲げられていた。永久に売れるお菓子を作りたいという気持ちが、この言葉につながっているのだろう。このにしき堂の思いは、きっとお菓子を口にする人々に届いているはずだ。それがにしき堂のお菓子が県内外の人々に愛され続ける理由ではないだろうか。